ザ・ウォーク
今年に公開された映画でしたかね?
THE WALK
この映画、実話を基にしています。
ニューヨークの象徴的な建造物の1つであった、ワールドトレードセンターで"綱渡り"をした男の話です。
監督はロバードゼメキス。結構安心して観ることができます。
この映画の主人公フィリップ・プティはフランスで生まれた大道芸人。
大道芸は許可を取らず街中でパフォーマンスをするため、警察に追われることもしばしば。
そんな中でノートルダム大聖堂の上にロープをかけて綱渡りをすることになるのですが、もちろん無許可での行為なので、綱渡り自体は成功するのですが、最後に捕まってしまいます。
ただこのときプティは一定の満足感を得るのです。しかしそれでも飽き足らないプティはやがて、新聞で目にしたワールドトレードセンターにロープをかけてみたいという欲求にかられるようになり、誰も成し遂げたことのない高さでの綱渡りを成功させることになる。という話。
当然、観始めた瞬間に物語の終わりが見えます。なんなら観る前からわかるわけです。ワールドトレードセンターで綱渡りを成功させるんだろうなと。
それでもこの映画は飽きさせない工夫がいっぱい詰まっています。実話を基にした映画というのは得てして単調で間延びした印象を受けますが、この映画は非常にテンポよく物語が進んでいきます。
そして地上411mという高さにいるという圧倒的な迫力、恐怖感をCGで再現しています。
眼下に広がるニューヨークシティが霞んで見えるような高さ。命綱はなく生身のままで虚空のなかに足を踏み入れる感覚を見事に表現。
無限に続いていっているかのようにどこまでも伸びるワイヤーの上を一歩、また一歩と足を出していきます。
この瞬間、プティは生きています。
大道芸人として生きてきた男が、最高の自分をこの世に誕生させることができたわけです。
この日のために仲間とともに努力を続け、ついに誰も成し遂げたことのない偉業を達成するとともに、今までに感じたこともないような充実感に包まれるのです。
今回もしっかり逮捕されるのですが、彼の勇気は讃えられ、初めはニューヨークの人々からあまり好かれていなかったワールドトレードセンターさえ、この街の象徴的なものに彼はしてしまったのです。
どうしてこんなに無謀なことに挑むのか?普通の人には理解できることではないし、馬鹿げているとも言える。
しかしプティの生きる道こそがそこには存在しているのです。
意味がないと思われようとワイヤーの上を進むのです。それこそが生きるということなんです。
やはり矜持を持った人間というのはカッコいいもんです。
自分を納得させる選択のできる人間ってのは案外少ない。
どうしても妥協が生まれる。そして自分に言い訳をしてしまう。
そんな妥協をせずに、まっすぐに突き進んだ男の映画でした。
名作とはならないだろうが、十分に楽しめる良作でした。